米連邦判事、ペンタゴンのAnthropic排除を違法と判断
米連邦判事が、ペンタゴンによるAnthropicの「サプライチェーンリスク」指定を無効とした。致死兵器と大規模監視への協力を拒んだAnthropicへの違憲的な報復だったと認定した。

サンフランシスコの連邦判事は木曜日、今年初めにペンタゴンがAnthropicをブラックリストに入れたことは違法だったと判断した。トランプ政権との数カ月に及ぶ対立の中で、このAI企業にとって大きな勝利となった。連邦地裁のリタ・リン(Rita Lin)判事は、国防総省が2月にAnthropicを「サプライチェーンリスク」に指定したことは合衆国憲法修正第1条に違反すると認定した。この指定により、同社は連邦契約から締め出され、軍需請負業者もAnthropicとの取引を停止させられていた。
59ページに及ぶ判決文の中でリン判事は、ヘグセス国防長官の決定は「恣意的で、気まぐれで、裁量権の濫用であり、法律にも反する」と記した。同判事は、この指定はAnthropicが軍事AIの利用方針を公に批判したことへの違法な報復であり、本当の意味での国家安全保障上の懸念ではないと結論づけた。
判決で実際に何が変わるのか
この命令はヘグセス長官による2月27日の決定を無効とし、ペンタゴン、財務省、国務省、国土安全保障省を含む9つの連邦機関が科していた制裁を解除する。これらの機関は「サプライチェーンリスク」の指定を根拠にAnthropicとの関係を断ち、請負業者にClaudeモデルを避けるよう圧力をかけていた。リン判事の命令はこうした制裁を完全に取り除く。
ただし今回の判決は、ペンタゴンに対してAnthropicと再び取引することまでは義務付けていない。リン判事は、国防総省が望むAIベンダーを自由に選ぶ権利は引き続き有しており、Claudeの利用を強制されるわけではないと明確に述べた。同判事によれば、国防総省にできないのは、政府の要求を拒んだベンダーを、偽りの安全保障上の脅威というレッテルを貼って罰することだという。
国家安全保障を空虚に持ち出すことは、政府への批判者を罰し、報復するための白紙委任状にはならない。
2億ドルの契約がブラックリストに変わった経緯
今回の対立は、ペンタゴンがAnthropicのClaudeモデルを軍事用途に使用するための、およそ2億ドル規模の契約に端を発する。この冬、ヘグセス長官は業界全体のAI契約を見直し、ペンタゴンが技術を「あらゆる合法的用途」に使えるようにしようとした。これは大幅な権限拡大にあたる。ほとんどのAI企業はこれに応じたが、Anthropicは拒否し、2つの制限を譲らなかった。完全自律型の致死兵器への利用禁止と、米国市民に対する大規模監視への利用禁止である。
ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を拘束する作戦でClaudeが使用されたとの報道が出た後、緊張は一段と高まった。Palantirの社員が、Anthropic社員から寄せられたモデルの使われ方への懸念を当局に伝えたのだ。交渉は2月に決裂した。その数日後、Anthropicは米国政府によって「サプライチェーンリスク」に公式指定された初の米国企業となり、ペンタゴンはグーグル、マイクロソフト、OpenAI、スペースXを含む他の7社のAI企業と代替契約を結んだ。
- 2月27日:ヘグセス長官がAnthropicを「サプライチェーンリスク」に指定し、連邦契約から締め出す。
- 3月:リン判事が仮の差し止め命令を出し、「典型的な違法な憲法修正第1条への報復」と断じる。
- Anthropicはサンフランシスコ連邦地裁とワシントンDC巡回控訴裁判所の2つの法廷で提訴。
- 8月27日:リン判事が59ページの最終判決を下し、指定と9機関による制裁を無効とする。
法廷闘争はまだ終わっていない
ペンタゴンが同じ指定の根拠とした別の法的枠組みを争う、ワシントンDC巡回控訴裁判所でのAnthropicの訴訟は、依然として係属中だ。この訴訟が決着するまで、Anthropicは書面上は依然として「サプライチェーンリスク」に指定されたままとなる。ただし木曜日の判決により、それに伴う実質的な制裁は取り除かれている。ペンタゴンの報道官には直ちにコメントを求めることができず、同省はリン判事の判決を控訴するとみられている。
リン判事はさらに、政府の主張の根拠を弱める事実にも言及した。Anthropicをブラックリストに入れた後も、米政府当局者は同社の最新モデル「Mythos」を機密性の高い政府業務で利用することについて協議を続けていたという。判決文には「これらはすべて、Anthropicが自社ソフトウェアを意図的に破壊し国家安全保障を害する破壊工作員であるという真の懸念とは、まったく整合しない」と記されている。
Anthropicの広報担当者は声明で、「このサプライチェーンリスク指定を違法と判断した裁判所の判決を歓迎する」とし、「すべての米国民がこの技術の恩恵を受けられるよう、国家安全保障のためにAIを活用する取り組みを政府と生産的に進めることに引き続き注力する」と述べた。日本のAI企業や政府調達に関わる関係者にとっても、今回の判決は具体的な先例となる。世界最強クラスの政府を相手にしていても、致死兵器や監視用途に自ら制限を設けたベンダーを、国家安全保障のレッテルを使って罰することはできないという判例が確立されたのだ。
出典
- A Judge Has Blocked the Pentagon's Attempt to Blacklist AnthropicWIRED · 2026年8月28日
- Judge blocks Pentagon blacklist of Anthropic as supply chain riskCNBC · 2026年8月28日
- Anthropic was illegally blacklisted by the Trump administration, court rulesThe Verge · 2026年8月28日



