NYタイムズ訴訟で明らかになったMicrosoftとOpenAIの内部文書:AIデータ収集の実態
未編集の内部メモが裁判資料として提出され、経営陣が大規模なコンテンツ収集を史上最大の労働窃盗と呼び、収益循環の破壊的リスクを警告していることが示された。

ニューヨーク・タイムズと他の出版社がMicrosoftとOpenAIに対して提起した著作権訴訟において、原告側は未編集の内部文書を提出し、両社が生成AIモデルの学習に著作権で保護された大量のコンテンツを収集する姿勢を明らかにした。
これらの提出物には、裁判記録に入る前に検閲されていないメールや内部報告書が含まれ、2026年9月17日と18日にそれぞれArs TechnicaとGolem.deが報じている。
経営層の表現は「前例のない窃盗」
あるメモでは、Microsoftの応用科学部門ディレクターであるブレント・ヘクトが、膨大なコンテンツ収集を「人類史上最大の労働窃盗」と表現し、フェアユース防御への依存を内部で疑問視していると引用されている。
ヘクト氏のコメントは法的分析ではなく個人的見解であるとMicrosoftは後に公的に強調した。
破壊的な経済ループの懸念
別の内部文書では、著作権で保護されたコンテンツを利用したAI製品が元コンテンツ提供者の収益を減少させ、その結果、将来のモデル学習に利用できる素材がさらに減少する「破壊的ループ」について警告している。
このサイクルは出版エコシステムの長期的な健全性を損なう可能性があるとし、原告側の訴状でも同様の懸念が示されている。
トラフィック低下とユーザー行動の証拠
原告は、AI生成回答が表示された後にクリック率が83%から93%、別の見出しでは51%から94%まで低下したデータを提示しているが、これは裁判所が認定した事実ではなく証拠として提出されたものだ。
OpenAI内部のメッセージでは、一部の従業員が回答が事前に提供されることでユーザーがリンクをクリックしにくくなると考えており、出版社側のトラフィック減少主張を裏付けている。
- ブレント・ヘクトはスクレイピングを「人類史上最大の労働窃盗」と呼んだ
- Microsoftはコンテンツ提供者への破壊的な収益ループを警告した
- サティア・ナデラはAIアシスタントがサイト訪問を代替できると証言した
- OpenAIスタッフは事前生成回答でクリック率低下を予測した
MicrosoftのCEOであるサティア・ナデラは、AIアシスタントが情報を直接提供することでユーザーが元記事にアクセスする必要がなくなると証言し、内部でのトラフィック喪失懸念と一致した発言をした。
原告はまた、第三者ベンダーが約180万件のNYタイムズ記事を商用利用制限下で取得し、モデル訓練に利用したというペイウォール回避手法が発見されたと主張している。
Microsoftは、引用された発言は個人の見解であり、会社の公式な法的立場ではないと回答した。両社は著作権で保護された素材の使用はフェアユースの範囲内であると主張し、裁判所の判断は未だ下されていない。
この訴訟はまだ実体判決が出ておらず、提出された文書は証拠として残るが、判決が下されるまで案件は継続される。
日本のメディア企業にとって、内部文書の公開はAI生成コンテンツに依存する事業者のリスクが高まっていることを示す。フェアユースへの疑念とクリック率低下の実証は、将来的により厳格なライセンス契約やデータ取得の透明性が求められ、著作権保護テキストに依存する大規模言語モデルの導入コストが上昇する可能性を示唆している。
出典
- Microsoft exec called AI scraping the largest theft of labor in human historyArs Technica · 2026年9月17日
- Ungeschwärzte Dokumente belasten Microsoft und OpenAIGolem.de · 2026年9月18日



