アリババ、AI投資へ102億ドルを香港で調達
アリババは1株112.70香港ドルで7億1000万株の新株を発行し、800億香港ドル(約102億ドル)を調達した。香港史上最大級の増資で、調達資金は全額AI関連投資に充てる。

アリババグループは香港証券取引所で800億香港ドル、日本円換算で約102億ドル・88億ユーロに相当する資金を調達した。同社は1株112.70香港ドルで7億1000万株の新株を発行し、これは拡大後の発行済株式の約3.6%にあたる。アリババはブルームバーグが引用した声明で「今回の株式発行による手取り金の100%を、サプライチェーン全体を対象としたAIソリューションに投資する計画だ」と発表した。
ブルームバーグによると、これは香港上場企業として過去最大の増資案件で、ロイターによると2026年の世界の株式調達額としてはAlphabet、インテルに次ぐ3番目の規模だという。機関投資家からの需要は募集額の約3倍に達し、注文総額は約280億ドルに上った。このうち約60億ドルは長期投資家や政府系ファンドからのものだったと、事情に詳しい関係者がロイターに述べた。参加した投資家としてカタール投資庁、ノルウェーの政府系ファンドNorges、投資会社ヒルハウス(高瓴)の名前が挙がったが、いずれも参加を確認していない。アリババ自身は90日間のロックアップに応じる。旺盛な需要にもかかわらず、香港上場のアリババ株は大きく下落した。ブルームバーグは下落率を8.5%と報じ、2025年初め以来の下落幅としたが、ロイターは一時10.5%まで下落したのち、下げ幅が公募価格の割引率とほぼ同水準まで縮小したと伝えており、両社の報じる下落率には差がある。会長のジョセフ・ツァイ氏とCEOのエディ・ウー氏は同日、自ら株式を買い増した。香港証券取引所への開示によると、ツァイ氏は約8000万香港ドル、ウー氏は約4000万香港ドル分を購入したという。
アリババが巨額の資金を必要とする理由
今回の増資は、アリババがすでにどれほど積極的に投資しているかを示す第2四半期決算の発表直後に行われた。ロイターによると、4〜6月期の設備投資は前年同期比75%増の667億8000万元(100億ドル超)に達し、主にAIインフラとプロセッサーの購入によるものだったという。同期間の純利益は大きく落ち込んだが、ロイターは減益率を75%と伝える一方、オランダのメディアEmerceは「約60%近く」としており、正確な減益幅は情報源によって食い違っている。AI戦略をより明確にするため、アリババは会計上の新たな2部門を設けた。「AIクラウド・コンピュートサービス」と、消費者向けアプリのQwen Consumerや法人向けプラットフォームQwenWorkを含む「AIラボ・アプリケーション」だ。クラウド・コンピューティング部門の売上は45%増の484億4000万元(約71億ドル)となり、AI関連製品の売上は18億ドルを超え、同社の発表によれば12四半期連続で3桁の成長を記録したという。
- AIモデルの学習・運用に使う計算能力
- 自社ブランドT-Headによる独自AIチップ
- データセンターの増設・刷新
今回の増資は、アリババが2025年2月に発表した投資計画に上乗せする形となる。同計画では2026年から2029年までの3年間で、AIとクラウドインフラに少なくとも3800億元(約565億ドル、500億ユーロ)を投じるとしていた。ロイターによると、8月半ばの時点でアリババはすでにこの予算の半分近くを使い切っていたという。エディ・ウーCEOは四半期決算の電話会議で、投資加速の理由をこう説明した。
将来の成長の恩恵を受けるためには、まずこうした資本投資を行い、必要な計算能力を構築しなければならない。
アリババはこれらの投資を約3年で回収し、2年半以内に利益率の改善も見込めるとしている。購入したプロセッサーに代えて自社製T-Headチップの比率を高めることも一因で、ウー氏はこれによりAI事業の粗利益率が向上するはずだと述べた。
中国のテック大手、米国との差は依然大きい
アリババの今回の動きは、世界的なAI投資競争がいかに不均衡かも浮き彫りにしている。資産運用会社キャピタル・グループの試算では、マイクロソフト、アマゾン、Alphabet、メタ、オラクルの5社によるAI関連の累積設備投資額は7月末時点で7910億ドルに達した一方、中国の主要テック4社——バイトダンス、アリババ、テンセント、百度——を合わせても1180億ドルにとどまるという。比較すると、米AI企業アンソロピックは過去12カ月だけで単独で1000億ドル超を投資家から調達しており、これはアリババの3年間のAI予算全体を上回る規模だ。競合の百度は現時点で新規の株式発行を計画していないとし、広報担当者はブルームバーグに対し、自社のキャッシュフローと手元資金で十分だと述べた。
この差の一因は、米国によるエヌビディアの最先端AIチップの輸出規制にある。これにより中国企業は自前でチップを開発し、より少ない計算資源で動くようモデルを最適化せざるを得なくなっている。アリババは最近、ゲーム事業の霊犀互娯(Lingxi Games)を投資ファンドのTrustar Capitalに売却した。取引額は少なくとも15億ドルとされ、AI・クラウド戦略のために資金を捻出しているもう一つの兆候といえる。
クラウドサービスを利用する日本企業にとって、今回の増資はアリババクラウドが今後、価格と計算能力の両面でAWS、Google Cloud、マイクロソフトAzureとの競争をさらに激化させる兆しといえる。特にアジア市場では、アリババはすでに最大級のクラウド事業者の一角を占めている。一方でアナリストは、中国国内の消費が引き続き弱含みの中、アリババがAI投資をどのように持続的な収益につなげるのかはまだ示されていないと指摘する。これは長期的なクラウド事業者を選ぶ日本企業にとっても、同じく重要な論点となりそうだ。
出典
- Alibaba zet nog zwaarder in op AI: haalt 9 miljard opEmerce · 2026年8月27日
- Alibaba raises US$10 billion in record Hong Kong share saleTaipei Times (Bloomberg) · 2026年8月25日
- Alibaba to raise $10.2B for AI in Hong Kong share saleForkLog (Reuters) · 2026年8月24日



