テンセント、7700億パラメータの新モデル「Hy4 Preview」をオープンソース公開
テンセントは8月28日、新世代大規模言語モデル「Hy4 Preview」をオープンソースで公開した。総パラメータ数7700億のMoE構造で、コンテキスト長は100万トークン超。社内のブラインド評価ではGLM-5.3とKimi K3をわずかに上回った。

テンセントは8月28日、新世代の大規模言語モデル「Hy4 Preview」をオープンソースとして公開した。混合エキスパート(MoE)構造を採用し、総パラメータ数は7700億に達するが、実際の推論では入力トークンごとに490億パラメータのみが選択的に活性化される。コンテキストウィンドウは100万トークンを超え、長大なコードベースや複数の長文書を一度に扱っても文脈を見失わないよう設計されている。これはテンセントのHunyuan系モデルのこれまでのバージョンと比べても、モデル規模と扱えるコンテキスト長の両面で明確な進歩といえる。
生産性とエージェント作業に焦点を当てた設計
テンセントによれば、このモデルは単なる対話型チャットボットではなく、コーディングエージェント、複雑なツール連携ワークフロー、そして計画立案・文脈の継続・複数ステップの実行を要する生産性業務を想定して設計されたという。同社は設計段階から、ソフトウェアエンジニアリング、ゲーム開発、金融、セキュリティの各分野の専門家と連携し、実際の業務データでモデルを訓練したと説明する。自社のコーディングツール「CodeBuddy」や業務協業プラットフォーム「WorkBuddy」と深く統合されており、単なる対話を超えて、エンジニアやアナリストがすぐに業務へ投入できるB2B向け生産性ソリューションとしての立ち位置を狙っている。
ブラインド評価でGLM-5.3・Kimi K3をわずかに上回る
テンセントは社内の専門家163人を動員し、203件の実務的なエンジニアリング課題によるブラインドテストを実施したという。その結果、Hy4 Previewは4.00点満点中平均2.99点を記録し、智譜AI(Zhipu AI)の「GLM-5.3」(2.92点)、月之暗面(Moonshot AI)の「Kimi K3」(2.94点)をわずかに上回った。コーディングおよびエージェント性能は前バージョンから大きく向上し、オープンモデルの中ではトップ水準に達したが、テンセント自身も、オープンAIやアンソロピックの最先端のクローズドモデルにはまだ及ばないと認めている。
テンセントは、中国のAI市場が大手テック企業とスタートアップの間で性能面・商用化面ともに競争を激化させていると指摘する。完成版をすぐに投入するのではなく、まずプレビュー版を公開して市場からの実際のフィードバックを集め、そこから素早く反復改善する方針を選んだという説明だ。今回の公開は、智譜AI(Zhipu AI)のGLMシリーズや月之暗面(Moonshot AI)のKimiシリーズが相次いで新モデルを投入している時期と重なっており、テンセントは自社の製品エコシステムと結びついた業務特化型モデルとして存在感を示そうとしていると見られる。
- 総パラメータ数7700億、活性化パラメータ490億(MoE構造)
- コンテキストウィンドウ100万トークン超、コードベースや大量の文書を一度に処理可能
- 提供経路:WorkBuddy・CodeBuddy(中国版・国際版)、元宝(Yuanbao)、ima、Tencent Cloud TokenHub API、OpenRouter
- 公開記念としてWorkBuddy・CodeBuddyを2週間無料提供
- API価格:入力100万トークンあたり0.834ドル、出力100万トークンあたり2.501ドル
- 重みはHugging Face、GitHub、ModelScopeの3プラットフォームに同時公開
認めた限界と、素早く反復する戦略
テンセントは、このモデルが正式版に先立つ「プレビュー」段階であるため、複雑なタスクで思考時間が長くなったり、自己検証を過度に繰り返したりする限界がなお残ると認めている。同時に同社は、このモデルが自社の学習・推論システムの一部最適化にも活用され、基準値に対してエンドツーエンドのスループットを31.8%向上させたと説明した。完成版を待つのではなく、まずプレビューを素早く投入して市場からの実際のフィードバックを集め、それをもとに正式版Hy4の完成度を高めていくのがテンセントの戦略だ。同時に、CodeBuddyとWorkBuddyの初期無料提供は、利用者を自社エコシステムに囲い込むロックイン施策でもある。
日本企業にとって何が変わるのか
日本の開発チームやIT企業にとっては、選択肢がひとつ増えたことになる。OpenRouterやTencent CloudのAPIを通じて専用インフラを構築せずにすぐ利用できるうえ、重みが公開されているため、オンプレミス運用や自社でのファインチューニングを検討する企業にとってもハードルは低い。API価格が入力100万トークンあたり1ドルを下回る水準に抑えられている点も、大量のコードレビューや文書処理を任せたい企業にとってコスト面での判断材料になり得る。ただし、智譜AIやMoonshot AIといった中国発のオープンモデルが僅差で競い合う構図が続いており、実際の導入前には自社の業務データでの性能検証、そしてデータがどこで処理・保管されるかの確認が依然として欠かせない。
出典
- 텐센트, 차세대 모델 'Hy4 프리뷰' 오픈 출시로 기업용 시장 정조준AI타임스 · 2026年8月28日
- Tencent open-sources Hy4 preview with 770B parameters and a 1M-token contextTechNode · 2026年8月28日



